卒業生から

現在さまざまな場所で活躍している卒業生から、生活団の時の思い出や、振り返って思うことなどを聞きました。また、生活団の時の絵や楽譜もご覧ください。


 私は中学で手にしたサックスを吹き続け、大学在学中よりジャズミュージシャンとしてプロ活動を始めましたが、2012年に縁あって長野県阿智村に新規就農し、現在農業と音楽の二足のわらじで生活しています。東京で生まれて、絵本に出てくる春のつくしも実際には見たことのない子どもだったので、自然に対するあこがれが強く今の住処に流れ着きましたが、思えば生活団で小さな生き物たちや花や野菜を世話しながら学ぶ経験は大きかったと思います。

 田舎に引っ越して、東京でのライブ活動が減った一方で音楽制作の仕事に力を傾けるようになりました。阿智村の隣で人形劇がさかんな飯田市の人形劇フェスティバルでの音楽制作(2016『さんしょううお』)を頼まれたり、自主的に地域の問題をとりあげて有志の力を集めたアルバム(2015『夢のリニア超特急』)を作ったりするなかで、そのルーツが生活団において歌を作ったことにあると母より聞かされ、自分でも驚いています。

 歌や音楽に限らず、表現行為というものは、すべて個が確立されていなければできるものではありません。個が確立されるためには、その人の個が尊重されるという体験を経て、自分の個性を自分で認めるということが必要ですが、そのような、個が尊重されるという体験を人生の最も早い時期に生活団で得ることができたことは、自分の人生において大きな財産であると思います。さまざまな思惑の交差する社会のなかで、まわりの人たちの圧力やもはや意義を失ったしきたりのようなものに縛られることなく、主体的にうまくつきあっていきながら責任をもって創造的に人生を生きていく力をつけることがこれからの変化する時代には必要だと思いますが、今、生活の自立、自給自足を目指して田舎での生活を学びながら音楽活動においても一線の現場で優れた仲間や先輩そして若者と刺激を与えあいながら続けていられる、自分にとって納得できる生き方をできているのは、人生のスタートにおいて個人としてみとめられ自主性と責任感を持つことを教えてくれた生活団に負う部分が大きいと、あらためて感謝しています。

 

27回生 森田 修史さん


東京藝術大学で作曲を学び、在学中よりTVアニメやCM、東京ディズニーランドなどの音楽の作編曲を手がける。近年では、TVアニメ『霊剣山 星屑達の宴』、『ルガーコード1951』のサウンドトラックや、Gulliver、DENSO、野村不動産PROUDのTVCMのための音楽など。また須川展也、中川英二郎、高嶋ちさ子、沖仁、各氏など様々な音楽家の委嘱作品やアレンジを手がける。2016年5月には城田優演出のミュージカル『アップル・ツリー」で全編アレンジ、ピアノ演奏を担当。

 

42回生 川﨑 龍さん


生活団を振り返って

 私は今年62歳になる歯科医師です。杉並区で開業、大学での学生実習、地方講演など、忙しい日々を送っています。また20数年、生活団の歯科検診も担当いたしております。

 振り返ると人生の中で何回かの転機があったように思われます。その節目には人と環境(先生や友達、生活団、小学校、中学校、高校、大学)があり今になってみれば、人生に何らかの影響を与えてもらったことは確かです。私自身そのことに気がついたのは、社会人になってからだと思います。その中でも人生の大切な時期(幼少期)を生活団で過ごせたことは私や母、家族にとって貴重な体験だったと母(91歳)とよく話します。

 生活団は普通の幼稚園と違い毎日ではなく、週2~3回と少し変則的でありましたが、教育内容として「生活の基本」があります。これは大変重要なことで、最も大切な幼少期に音楽や動物を世話すること(観察力、優しさ、行動力)、昼寝のふとん、お泊り体験、風呂敷の使い方や子供を考えた昼食など、母親にとっても大変だと思いますが、その子の将来を考えれば重要な事だと思います。母に「あの時は大変だったけど、毎日が充実していたわよ」と言われると今更ながら感謝です。

 人間どこで芽が出るかわかりません。その下地が作られるのが幼少期であることは間違いありません。子どもが成長し、自分の人生を切り開く力を身につけることの大切さが「生活の基本」だと思います。

 生活団は子どもと母親、家族を成長させる場所だと思います。

 

5回生 田村歯科医院 田村 仁志さん


 

私は1992年度に世田谷幼児生活団に入団しました。マイペースな子どもでしたが、先生方は辛抱強く見守ってくださいました。2年目から始まる音楽の時間のおかげで、卒業するころには絶対音感が身についており、本を読むように楽譜を読める子どもになっていました。私は現在ピアニストとして活動していますが、それはこの音楽教育がベースにあったからだと確信しています。お世話になった先生方にはとても感謝しています。

38回生 金井 裕 さん

 

 


 私は平成18年3月に生活団を卒業しました。現在高校生として、忙しくも充実した日々を過ごしています。生活団で体験したことで覚えているのは、クリスマス会です。あのころのワクワクした気持ちが、今の前向きに様々なことを探求したいという思いにつながっているのだと感じます。伸び伸びとした環境の中で好奇心を育ててくれた生活団に感謝しつつ、今の私の夢である幼児教育に携わることに向かって邁進していきたいです。

 

50回生 高校生 横山さん


 私は4才組の3学期から生活団に通いました。生活団はたくさんの思い出がある、楽しかった場所でした。その中でも心に残っていることが2つあります。

 1つ目は、とても大きな紙に絵を描いたことです。生活団では自分より大きな紙に絵を描かせてくれました。私はその大きな紙に絵の具を使って思いきり大きく絵を描くことができて、とても楽しかったです。小学校に入ってからも絵を描くことはたくさんありますが、生活団のように大きな紙ではなく、小さな画用紙です。その小さな紙の中で絵を描くことは、時々さみしいなと思います。今は生活団でとても大きな紙に絵を思い切り自由に描けたことはとても貴重な体験だったと思います。

 2つ目は植物や動物のお世話をしていたことです。私は小学校で2年生の時からずっとザリガニを育てています。私はザリガニはもちろん大好きだし、ほかの動物も好きです。こんなに動物を愛せるようになったのは生活団のおかげだなと思っています。私は家で動物を飼ったことはありません。生活団に入って初めて動物のお世話をしました。4才組では十姉妹、5才組ではモルモット、6才組では鳩をお世話しました。中でも鳩のことはとても心に残っています。6才組で鳩の1年を見ました。鳩が卵を産んだのも見ました。鳩小屋の掃除をしたり、包丁を使ってエサの準備もしました。鳩のえさやりで「すりきり何杯」という言葉も覚えました。そのように鳩をお世話して、私は鳩のいろいろなことを知りました。そして鳩のいろいろな所も好きになりました。なので学校でザリガニを育て始めた時もザリガニのいろいろなことを調べて、知って、いろいろな所が好きになりました。

 生活団ではいっぱいいろいろなことを教えてくれました。ほかにも生活団にいて、いろいろなことが心に残っていますが、その全てが今の小学校生活で役に立っていると思うので、生活団にとても感謝しています。今でも生活団は大好きです。

 

57回生 小4 大杉さん


卒業生の動物当番  貼り絵

卒業生の動物当番  貼り絵



生活団でいただいたものをしまっておいた箱を久々に開けると、かわいらしいお印がたくさん出てきた。はっきりと覚えているわけではないけれど、お星さまのついたお印が欲しかったこと。よい香りがしたお印。なんとなく覚えていて懐かしい気持ちになった。

通っていたのは違うところだったけれど、同じく生活団で過ごした友人に懐かしいでしょう!と見せてみたところ、このお印は私も持っているだとか、私の持ってる中で一番ステキなのは卒業の時いただいたのだとか、これは○○ができた時のお印!だとか…全く同じものではないけれど、それぞれが過ごした時間の思い出の話で盛り上がった。

幼い頃の記憶は曖昧だけれど、きっと充実していた日々は心の中に残っていて、ふとした時にうかびあがってくる。

今では当たり前にできる色々なことも、生活団に通い始めたばかりの頃はそうではなかった。お印とともにできることや思い出が増えていった。そのひとつひとつが大切な宝物だと思っている。

 

39回生  会社員  古川さん


幼児期の教育の重要性を表す「三つ子の魂百まで」という言葉がありますが、世田谷幼児生活団ではその幼児期に、基本的な生活習慣を保護者の愛情を通じて身につけることができるよう指導をしてくれます。

例えば、よい習慣をつけるために、はげみ表を使って毎日の行動を幼児が自分自身で管理するのですが、そのはげみ表は毎日更新するのが楽しくなるような工夫のつまった手作りの可愛らしいものでした。

その当時は難しいことはわからず楽しんでいただけでしたが、今あらためて振り返ると、自立した一人の人間として生きていくための基本を学ぶ機会を与えてもらったと思っています。

 

36回生 会社員 Tさん


5才組 家族の絵

「パパがゆびわつくってるところ」

45回生 社会人 Nさん

56回生 小5 Iさん



生活団のみんなで取り組む音楽が好きでした。

一つのことに一生懸命取り組む姿勢を培える場所だと思います。

 

大学は駅伝部に所属し、高校卒業式の翌日から寮生活。箱根駅伝出場を目指して朝夕の練習に明け暮れた4年間でした。大学まで部活を続けられたこと、今仕事を頑張り続けられるのも、生活団の時培った姿勢と、一緒に卒団した仲間達の活躍から、影響を受け続けられたことのおかげだと思います!

 

42回生 会社員 江副さん


I am currently attending a Canadian university and going to graduate next Spring. To be honest, I do not exactly know how my childhood shaped who I am today. One thing I can say is probably that I am now free from prejudice and generalizing people unreasonably. It is because of the education I received during my early age, which was really interdisciplinary and ‘free’. That is why I do not restrict myself today to unnecessarily narrow my interests down. I do not feel uncomfortable following my guts and pursuing whatever I am interested in. They may not be practical in terms of professions, but I know that they make me active and thrilled with life. There is so much to see and to do out there in the world. I am thankful for this opportunity to be able to do things I like and for being myself today. This free spirit is perhaps what I gained the most from my childhood.

 

45回生 大学生 藤原さん


59回生 小2 Hさん

6才組 鳩当番の絵

45回生 大学生 Nさん



一年生になったらポニーのおせわをはじめました。二年生になってもポニーきょうしつをつづけたいです。ポニーきょうしつというのはポニーのおへやをそうじしたり、ポニーにのったりすることです。ポニーきょうしつはたのしいです。いつも3じから5じまでやってるのでいつもつかれます。子どもの中学生までポニーきょうしつをつづけたいです。どうしてつづけたいかというと、ポニーの目がかわいいからです。小学校ではかんじをやったり、せいかつなどパソコンをやっています。ポニーきょうしつはどこでやっているかというとこうえんでやっています。おともだちもいっぱいいます。学校にもおともだちがいます。

60回生 小1 Kさん


 私は平成7年3月に世田谷幼児生活団を卒園しました。現在は大学院生として、素粒子の研究を行なっています。

 生活団では、基本的な生活習慣に関して教わっただけではなく、子どもの個性を認め自分の興味をより広げて考えていけるような環境を与えてもらえたと感じています。4才から6才という今の自分にとってはかなり過去の出来事ではありますが、そういった環境で幼い頃を過ごせたことが、今の自分の興味を研究につなげるということに役立っているように感じています。

39回生 大学院生 藤本さん


6才組 鳩当番の絵

49回生 大学生 Sさん



 生活団の音楽教育は、合奏やピアノの個人指導がある。私は中学から吹奏楽をしてきたが、音感や譜面の読み方の基礎はここで作られた。 自分が親元を離れた時、親がいない時、どのように生活するか。生活リズムを作り、食事を作り、衣食住に関心を持つなんて当たり前のことかもしれないが、生活団の学びで一番植えつけられたものはこれだと思っている。

39回生 会社員 畑田さん


 「しっかりしている人」という言葉をよく聞きます。この「しっかり」というのは、具体的にどんなことを指すのでしょう。

それは、時間厳守、言葉遣いなど社会で励まされる要素はもちろんのこと、外から来たら手洗いうがい、自分の持ち物を整える、身なりをきちんとする、規則正しい生活をする。おはよう、ありがとう、いただきますと挨拶や感謝をする。そんないつ覚えたのかわからない、でも誰でも知っている、世の中で当たり前だとされていることを、当たり前にやっていることなのだろうと思います。

 好感を持たれることであっても、実際には大人になるとだんだん出来なくなってしまうことかもしれません。しかし、もしそれらが何故大切なのか、どうやって出来るようになったのか、はっきりと自分に刻まれていたならば、ふとした拍子に思い出し考え直し、意識することができます。

 生活団はそのような生活の中の何気ない一つ一つが、経験と記憶と知識として自分の中に残る学びがあったと私は思います。何が良いか悪いか自分で考える、意見を共有する。それを繰り返して、納得して、吸収していく、学生の部活動や文化祭などと同じように、充実した日々を過ごしていたと後から実感しています。

47回生 大学生 Kさん